遠藤さくらのピアス事件
全く乃木坂に詳しいわけじゃないが
お気に入りの美少女(美青年)アイドルの「ファン」を数人フォローしている。
ファンをフォローしている理由は、単純に「どこが他とは違うポイントなのか、どこに需要があるのか」が分かりやすいからだ。
美少女や美少年は端的に言うと整っていて、整っているというのは乱暴に言えば無個性にも近いものがある。綺麗なだけの人形と、そうじゃないアイドルの違いを一番わかっているのは彼等のファンだ
美術館で解説音声をレンタルしながら絵を鑑賞するのに近い。
この美少女のどこが他と違い、どのように魅力的なのか。
尊い…しか言わないファンももちろんいるが探せば弁舌に長けた人も各ジャンルに1、2人は必ず発掘できるので、彼等の口からアイドルの魅力を聞くと言うのはなかなかに楽しい。
遠藤さくらちゃんという乃木坂メンバーで、ハタチになったばかりの女の子がピアスを開けた。それでファンが炎上していると言うのが目に入った。
令和だぞ?と思いつつツイート群を読んで思ったことを書く。
まずピアスをしている女性は街に大量に歩いている。
勿論オタクが追い求めているのは普通の女の子じゃなくて、理想の女の子=アイドルなわけだから、普通の女がピアスを開けているからこそピアスを開けない、普通よりも格が高い(?)理想の女の子でいて欲しいのかもしれない。
だがそこがもう、難しい。その理想…ピアスをしないということは一般的に別に”上”じゃないからだ。
ピアスというのはただのファッションのアイテムで付けた瞬間純潔が失われて女としての価値が下がる呪いの宝具ではない。オタクピアス嫌いおぢ的にはそうかもしれないが
一般的にはそうじゃないので
あくまでより多くの、大衆人気を得たいアイドルサイドとしては、おぢと一緒になってピアスを否定することで得るマニアックなおぢ人気よりも、お洒落さを売りにして女性客も取りに行く方が意義がある。
白石麻衣ちゃんの化粧動画は女性にも人気だ。基本的には男性客に支えられている女性アイドルとは言え一皮むけるにはよりカジュアルな層に支持されて国民的~の座をねらっていく必要がある。
そしてピアスを付けている人の実物を冷静に見たら所謂オタク男子が嫌いな不良っぽい人が少ないのは一目瞭然。なんなら綺麗な人だなと思った人が付けていることも多かろう。
そもそも不良らしい不良が令和にはほどんど絶滅している。
不良っぽいから嫌い…という間違った言葉で表現されているが、世の中に出回っているピアスの大半は上品なデザインで上品な大人の女性に似合う物だ。
大人を先取りしても別に荒れた雰囲気や不良感は出ない。
それにもう20歳になるアイドルの女の子にピアスが似合わないわけがない。
一粒ダイヤのシンプルな物から、韓国で流行ったスイング系の大振りデザイン、
日本で根強い人気の淡い系ファッションのアクセントになるゴールドまで何でも似合う。
厳密には骨格やら肌の色やらで似あう系統は分かれるがそれでも何を付けたとしてもアイドルなら似合わないことはない。
レベル上げてごり押しすれば勝てるみたいな感じで似合わない系統もアイドルするくらいの素地の良さがあれば押し通せる。
ピアスが嫌いなおじさんたちは…おそらく今60代のうちの両親に近い年齢層で、ピアスの種類が少なく、水商売の女性しか開けてなかった?ころのイメージで固まっていて、その後平成~令和で普通の女性を近くで見たことすらないのだろうな…と思ってしまった。
清純派ぶってピアスを開けるなんて!と怒っている人がいたが、あなたの思う清純派は
世間の清純派とは結構ズレているぞと突っ込まざるを得ない。ピアスくらい、今時男遊びしない真面目な子でもファッションとしてあける。
開ける時もそれほど痛くない。ぱちんと指ではじく程度の衝撃だから「痛い思いしてまでファッションを気にするなんて異常ヨ」みたいな物言いは的外れだ。大変気軽に楽しめるから浸透しているのだ。
そしてこの件、お金に余裕がないのに妻を専業主婦にさせたり、妻が着飾ることを嫌がる男性の心理が、この遠藤さくらピアス事件で発狂してるおぢと同じ精神性なんだろうと指摘している人がいて、ああなるほどなと自分も合点がいった。
彼等の求める女性像は究極的には”母”なのだろうと。
それものぶみ的で醜悪な、自己犠牲型昭和母。
自分が着飾る余裕があるのならその分を全て子と夫に投資すべき…なぜなら母というのは夫と子供に尽くすことで喜びを得るもので、それをしないのは失格…という価値観で、女性が女性自身に自己投資することを蛇蝎のごとく嫌う。
彼らからしたらピアスなんぞの”嗜好品”にうつつを抜かすのは強欲で我儘な女性だとうつるのかもしれない。
衣装は仕事で着せられているモノだからいくら華やかでも、イヤリングやヘアアクセサリーを付けていても気にしないが、ピアスは彼女らのプライベートの”おしゃれをする意思””自我”だから許せないのだろう。
とにかくアイドルに無自覚的にも母性を求めているから、女の部分を見るのは嫌なのだ。
酷い矛盾だ。アイドルにしっかり欲情しているのに
その半面ではそういう彼女たちに僕のママであることを求める。
自分好みの可愛い子に、自分という自信のない男を支え守り、いつも尽くしてくれて最優先にしてくれるママでいて欲しいから、自分が求めてないタイミングで女を出すなんて酷いことをしないで欲しいと。
自分勝手ここに極まれり…
息子はママと性行為しないっての。
なんだかアイドルの女の子たちが可哀想になってきた。もちろん彼女たちは舞台に立って表現することを生きがいとしているから、ファンがどうのこうのというのは二の次だろうと察するが、彼女たちが一生懸命練習した成果物を見るのがこんなおぢだなんて…気の毒になる。
アイドルは所詮偶像だ。彼女たちは夢を売っているから、童貞ピアス嫌いおぢ達はせっかく自分が金を出して買った夢が自分の気に入らない夢になったと怒って良いとも思っているのだろう。かなりマニアックで当人にしか分からないような夢を買って勝手に外れたって怒ってるのがタチ悪いけど、それはわからないでもない。でもやっぱりオタクは知るべきだ。
「この世に自分の思い通りになることなんてない」
多少お金を出したとしても、100%自分の思い通りになる夢なんて買えないのだ。
アイドルが思い通りにならないからと言って怒るオタクは当然キモイが
だからと言って俺は推しを全肯定できるぞと粋がるのもまあまあキモイ。
もちろんアイドルとしては全肯定してくれるファンの方がありがたいだろうから
アイドル本人に「うちのファンは良いファンだ」と思われたいのなら全肯定しておいた方が良いだろう。その方がお互いに幸せだ。
ただ実際のところ日本のアイドル産業の難しい部分だなとも思う。だって売り手が明らかに童貞ピアス嫌いおじのご機嫌を伺って、彼らの財布をしっかり狙っているから。
奇しくもここ最近女オタク界隈も、”推しの結婚”が続き騒がしくなっている。
知らない人もいるだろうが彼等は主に2.5次元と呼ばれる、アニメ原作の舞台を中心に活動していた俳優で、さらに言うと.5の最盛期を支えた人間たちだ。
新鋭も育っているのかもしれないが、まだまだ彼らが主役級で登壇してくる。
そして奇しくもこの三人、全員30代の仕事と立場がある女性と結婚した。
男性オタクよりも一足早く「推しに良いファンって思われたい」から、推しの結婚はお祝いできます私たち!むしろ早く結婚してほしかった!!!!(?)となかば現実逃避気味に明るくよい子のお返事で祝福して見せたファンたちも三連続の結婚報告には流石に耐えられなかった。
舞台オタク女たちは舞台チケットを何公演も買って現地に足を運ぶ必要があるので必然的に多少はお財布に余裕がある20代半~30代半ばほどの、ピアス童貞おじ同様オタ活をするために生きている女を中心に構成されている。
舞台に行くために休みやすくて給料の低い事務やアルバイト、夜職を惰性でしている女も多く、自分自身に誇れるものはこれと言ってない。
もしこれが18歳とか20代前半の、匂わせをしたり流出するような意識が低くて配偶者の仕事のこともろくに考えられない女と結婚したのなら
「バカな女に引っかかって人気商売の基礎もわきまえず看板をドブに捨てた馬鹿な推しにさよなら」
なんて言って推しを叩くことで気持ちを晴らして、元ジャンルに盛大に砂をかけて他ジャンルに転生することも出来たのに
美人で、夢を叶えてて、ネットでは負け組のはずの30代なのにしっかりとイケメンの彼氏に求愛された”他人に惑わされずに自分の人生を生きている”女にはどうあがいても勝ち目がない。非の打ち所がない女性と結婚されてしまっては全く持って推しに失望する言い訳が出来ない。
自分は良い子でいたいから、キモいファンと思われたくないから「アラサーの男がお似合いの女と結婚する時は祝福をするべきだ」という一般常識に歯向かえない。
推しは基本的にオタクにとって自分が夢中になれる存在で、相手の都合関係なく愛をぶつけてもいい、お金を払うことでそれが許されている…とオタクの多くは考えている。
リアルな生活で誇れることが何もないけど、推しを応援したら推しに感謝されて
自分が推しを肯定しているように、推しも自分たちを肯定してくれている
居場所がない人間たちにそういう空間を作ってくれているはずだった。
リアコ勢の為にリップサービスで「俺モテないよ」と言う推し。「友達いない」「コミュ障」と、オタたちにとって自分と同じだーと親近感と安心感を持たせてくるアイドル達。何にもなくてもまだ若いし、みんなも同じようにオタ活してるし、推しも元気をくれるから何もかも順調ーー
と夢の中にいたオタたちに、NOを突き付けるのが結婚報告。
「舞台上の推しと客席の自分は当然ながら全く別人種で」
「美人で、しっかり自分の夢があって、同じ立ち位置で出会えて、支え合える中身のある人と結婚する」「そんな女性と男性が結婚する。からっぽのオタクの自分は推しよりもランクが低いからどれだけ憧れてもその層の男に愛されることはないと、女のレベルを見る事でより現実的に知ってしまう」「恋愛苦手なんて嘘ジャン」
今回の結婚ラッシュで一番刺さったのは「他人のキラキラを見て生きる人間じゃなくて、自分がキラキラできる人間になりたかった」という発言をしていたオタク女だ。
本当に…それなんだよな。
アイドル産業というのは結局のところ、自分自身で熱中できるものが何もなく、アイドルや俳優という存在に夢中になることで現実逃避をして生きる…社会生活ではじき出されてしまった亡者を引き寄せてしまうし、亡者をスポイルしてもうけている部分がある。
今回オタク女たちの多くは
北村諒結婚で「へー、まあスキャンダル多かったし?むしろ相手の女の子の方が好きだから泣かせんなよって感じ」と変に姉御ぶって
鈴木弘樹結婚で「鈴木弘樹って人間だったんだ?って思っちゃったw美形すぎて人間味がないよねー」と話を逸らして現実逃避し
黒羽麻璃央結婚で「…自分の推しもそのうち結婚しちゃうのかな、素直に祝えない人を肯定したいと思います」
とついに本音をもらしていた。その工程の全てが痛々しかった。
一部には「もっと夢を見せてくれると思ったのに、裏切られたからせめて不幸になってほしい」と願っている女もいた。これは本音だろう。今は昔、声優の宮野真守の結婚の際に響いた阿鼻叫喚が懐かしくなるような呪詛。
宮野騒動で女オタクキモい怖いと言われたことを気にして
以降じわじわと「私たち推しの結婚を喜べる行儀いいファンなの」「オタ活をしている私たちは充実してていい人生なのよ」キャンペーンをしていたのにあっけなく限界を迎えた感じがある。
次の誰かが結婚した時はどんな主張が王道として押し出されるのだろうか。
現実逃避をいよいよ潰されて、現実に置かれたオタクが何をするのか
自分もオタクだけど気になってしまう。