若さがなくなったらどうするの?
大人腐女子にご意見ブログを書いたりするのが流行ってる…というわけでもなく
アラサーはもともとブログ文化の直撃を受けたから何か考えたり吐き出したいときにはブログを選択する人が多いというだけだと思う。
私も漏れなくその口なんだけど。
知人にもうすぐ三十代後半に突入する腐女子がいる。
彼女の悩みはとにかく「もう若くないこと」だ。
彼女…仮にAとするけどAは別に若さを武器にして男を手玉に取ってきたタイプではない。むしろ知る限り交際経験はゼロでとにかく同人文化の中で生きてきた人である。
20代でオタク活動を満喫する一番手っ取り早い方法は定職に就かないこと。
以前「腐女子カースト」なんてタイトルで実質ほとんど腐女子関係ないただのルッキズム女のマウント本だったエッセイ漫画が炎上したが
実際の腐女子・オタクのカーストは「狂った者勝ち」みたいなところがある。
オタク活動は宗教活動と似ていて(というと語弊があるが)推しだけを信じ、推し活にどのくらい狂えたか、どのくらい他の生活は捨てたか、どのくらい課金したかという廃人自慢で”強さ”が決まる。
社会人はお金はあるけど休みが取りにくいのと年々体力気力が衰えるから大体就職から3年目くらいを目途にパラパラとみんな脱オタしたり、ぬるオタ化していくんだけどそこでオタクを離脱せずに仕事の方を辞める人が一定数いて、Aもそのくちだった。
やりたいことが見つからないからとりあえず派遣で、契約社員で、バイトで…そうやって転職の限界と言われる30歳を過ぎていった。
腐女子の多くは「推しのことしか考えない、現実なんてゴミ!推しに狂ってる私たちクレイジー!最高!という意識を持っていてそれが時々取り返しのつかない方向に腐女子を導いていく。
Aはオタク友達と遊ぶのが一番楽しいと言って週末ごとに誰かの家に泊まりに行ったり、海外旅行にもよく行っていた。
親に早く結婚しろと言われてキレたり、兄妹に年相応の落ち着いた服を着ろと言われてキレたり。色んなものと戦っていたけど基本的には良い人だった。
Aは「自分には恋愛が必要なく、友達がいて趣味があれば人生が楽しい。そういう人間だから口出ししないで欲しい」と自分の幸せを証明するかのように全力で独身生活を楽しんでいた。
よく友達が結婚したら人生ステージの違いにより疎遠になるという人がいるが
Aの周囲の人は結婚して出産した人でも赤ちゃんの面倒を見ながら遊べるように子持ちの人の家に集合してDVDの鑑賞会をしたり、無理のない範囲で関係を続けているようで理想的な高齢オタク界隈と言えた。
変化が起きたのはAが旬ジャンルにハマって新垢を作ったあたりからだ。
オタクの中には年上のオタクを「いい年して恥ずかしい」と笑うオタクもいる。
Aが今好きなジャンルは特に学生が多いから、そこで年齢差別を受けたようだった。
期間限定と言って作っていた新垢に鍵をかけ、自分に嫌がらせをした人をあぶりだそうとしばらく色々やっていた様子だったが結局アカウントを削除して前ジャンルのアカウントに戻ってきた。
やっぱりこのアカウントが一番落ち着く、と言った彼女に何人かのフォロワーはお疲れ様のリプを飛ばしていた。また食事にでも行きましょうと私もリプライを送った。
私が彼女と最後に食事に行ったのは多分5年くらい前、前々ジャンルの作品の舞台が公演されていたころで、別の友人を介して彼女と舞台後のオフで会うようになったのが縁だった。
ここ最近特別親しい付き合いはしていなかったから、食事に行きましょうね、は実現する可能性は低い社交辞令だったけど直前に私たちが一緒に過ごしたジャンルの話もしていたから懐かしくなって話しかけた。
向こうからも社交辞令が返ってくるかと思ったら、意外と重い球が返ってきた。
「私たちもうババアだしね」「ほんと虚無」「何も楽しめない」と…。
Aがひどい目に遭ったという学生だらけのジャンルに比べたらこっちのアカウントは平均年齢28、9歳くらいでババア腐女子の巣窟だけど、だからと言って虚無ってこともなく…
何も楽しくないよね?というように同意を求められても困る。
若さがなくなることがつらい気持ちは私にもわかる。誰だって老いるのは嫌だし。
私も22、3歳の時の自分の容姿や環境でお気楽にオタクを続けられるならそうしたい。
でも自分がアラサーになったからと言って特別つらいかと聞かれると
特別はつらくない。
ババア”だからこそ”特別にツライことってそんなにない。
人生はいつでも地味にしんどいし、腐女子は10代だろうが30代だろうが生活環境はほとんど変わらないし、お色気コスプレイヤー以外は女同士でつるんでるから若さが特別有利になることもない。
年齢差がありすぎる人とは仲良くなれないこともあるが元々腐女子は大勢と無条件で仲良くなれることの方が少ない。
若い方が色々選択肢と可能性が残っているという点では抜群に良いんだけど、
…そもそももうババアだから諦めなきゃみたいな言葉はAが一番嫌っているものではなかっただろうか?そういうものと戦っていたはずだ。
だからAの卑屈な言葉にみんなただ普通に困った。
その後Aが妹のように可愛がっていたお気に入りの腐女子の婚約が決まってますますAはメンタルが不安定になって行った。
Aの妹分だったBは25歳だから、確かにもう決めちゃうんだ?早いな~!と聞いた瞬間は驚いたけどコロナが少し落ち着くまで式も挙げられないし様子も見たいし貯金もしたいから結婚自体は1~2年後を考えていると言っていて、なるほど、27歳で結婚した子たちはこういう準備をしていたのかと自分の同級生の第一時結婚ラッシュの裏側を見た気がした。計画的で素晴らしい。
だけどAは違ったみたいだ。
Bの婚約から明らかに焦っていて、寂しがり方が尋常じゃなかった。
そこからAは元彼に連絡したらもう結婚してたとか(そりゃ三十代半ばの人の元彼なら相手もアラフォーくらいだろうし…)そんなよくみるまとめブログみたいなことをしては凹んでいて
気の毒ではあったけどかける言葉は見つからなかった。
今更25歳の人と同じ足並みに合わせようとしても無理がある。
人は変わる。独身でずっとオタ活をして楽しむと言っていたAは
心のどこかで結婚を考えていた…というよりは、バイト暮らしで一人で生きていくという現実を直視しきれず、覚悟が出来ていなかったんだと思う。
ずっと見ないふりをして、自分には関係ないと遠ざけて
でも新ジャンルで出会ったばかりであまりよくお互いを知らないであろう学生のオタクに「オバサンなのに恥ずかしいと思わないの?」といった内容の指摘をされたこと…
知らない人だからこそ吐けた超客観的な意見にAは参ってしまったのだろう。
最近ではAは自分は大人になれない、現実逃避をしていると時折夜中に呟いているけれどそれは本当にそうなんだろうなとは思った。
Aは大人として趣味を楽しんだり、大人としての自分の立場を明確にしたくて戦っていたのではなくて、
あくまで子供のままでいたい、その一環として趣味にしがみついてしまっていたんだろう。
仕事と趣味と恋愛と結婚と…そういう大人のステージでどうバランスをとって生きていくか?とみんなが悩むところをすべて「わたし子供だから知らないもん。恋愛もまだ早いもん」で癇癪を起していたにすぎなかった。
時間は平等に流れて、年齢は重ねていくからいくら「大人になりたくない」と拒絶したところで、、世間は子ども扱いをもうしてくれないし
自分で心の整理をしないと、意地を張ってもお母さんが代わりに片付けてはくれない。
働かなくても一生食べられる大富豪なんかは子供のような目をしていたりする
(逆に何だか子供特有の残虐性みたいなものがにじみ出て怖い人もいる)
Aももし大富豪の娘に生まれていたら、「子供のままでいたい」という夢はお金の力で叶っていたかもしれない。
お手伝いさんに全部任せて、お金は専門家に管理してもらって、自分は好きなことをして生きる。
いいなあそれ、私もそうなりたい。そうなれないからある程度現実と向き合って
現実を良くしていくしか、絶望せずにいられる方法がない。
人生って平等じゃないなあと改めて…