morisankunの日記

アラサー。

明日私は誰かのカノジョ

よく宣伝が回って来る明日私は誰かのカノジョ、通称明日カノを読んでみた。

この作品を知らない人向けに説明するなら

・少女漫画版ウシジマくん

・底辺人間の苦しみが見たい人向けの漫画である。

少女漫画レーベルから出ている漫画ではないんだけど男性向けのサービスシーン(エロ、アクション、男に都合がいい展開)が一切なく…と言ってもイケメン祭りやヒロイン溺愛みたいな女性向けのサービスシーンも全くないんだけど、どちらかというと女性読者の共感を呼ぶもので、絵柄も青年誌と少女漫画の間くらいなので一応少女漫画に分類した。

ちなみにオムニバス形式でメインヒロインは存在しない。

 

この作品の中で特に人気があるキャラクターが”ゆあてゃ”と”アヤナ”だ。

ゆあてゃ、は地雷が一発で分かるあだ名で、本名は優愛(ゆあ)。

初登場時既にホスト狂いでホストに貢ぐために風俗嬢をしている美少女。偶然出会った萌ちゃんというコンプレックスを抱えている女の子をホストの道に引きずり込む。

 

アヤナは整形費用を貯めるためにレンタル彼女という水商売一歩手前くらいのバイトで生活をしている女性で整形して若く見えるが実年齢は35歳。

 

もう肩書きだけでも地獄が約束されている。

 

今回はそのアヤナの方について。アヤナの実年齢も関係しているのかアラサー女性にアヤナは割とウケが良い。ちなみに男性ウケはめちゃくちゃ悪い。

 

アヤナ編は、整形狂いの女の子が幸せになれない話だ。

アヤナには年下の彼氏・光晴がいる。彼は酔った勢いでアヤナをナンパしたものの普段はごくごく普通の会社員。顔は若干イケメン寄りで名前の通りの陽キャで、アヤナとの結婚を考えていて友達にアヤナを紹介する。

何の問題もなさそうな普通の男性…であり、男性が読むとかなりの確率でこの彼氏が一方的な被害者でアヤナは鬼のような女という感想になるが、女性からの感想は結構違う。

 

アヤナは嘘だらけで、光晴は自分にとって都合が良い部分しか見ない男

アヤナが嫌いな男性読者から見るとアヤナは男の敵とすら言える。

整形しているから顔も嘘、職業も嘘をついているし、整形するための費用を他の男から結婚詐欺まがいの方法で貢がせていて、年齢も嘘。嘘まみれだからだ。

年齢の虚偽に関しては他と違いわざと嘘をついたのではなくすれ違いが原因ではある。

アヤナと光晴の出会いがナンパだったため

光晴「何歳?年下だよね?」

アヤナ「年上」

このやり取りで彼が「じゃあ俺より一つ上とか?」と早合点してしまい

その場限りになると思っていたアヤナもそれを否定しないままに雑に関係が始まった。

出会いがナンパでなければ、あるいはどこかでちゃんと告白しなおして、区切りを設けていればアヤナも年齢をカミングアウトしやすかっただろうが

どうやら二人はそのままのノリで結婚も視野に入って来る間柄まで進んでしまい

物語当初のアヤナは実年齢を彼氏に打ち明けようかと悩んでもいたので、そこまで意図的に騙そうとしたわけではない。

 

職業に関してははっきり意識的に偽っている。彼にはコールセンター勤務と伝えていたものの実際にはそれよりも(若いうちは断然)稼げる水商売と接客業のはざま…レンタル彼女という仕事で生活をしていた。体は売っていないけど、職業を偽っていたというのはマイナス。アヤナが嘘をつく人間であると言うことは事実である。

しかし他人の職業が自己申告と違うことで何か実害があるかないかで言うと基本的に害はないので、この辺までは人によっては許せなくもない。実際彼氏である光晴もこれは許していた。

 

そして顔…整形。

これを嘘と呼ぶか、努力と呼ぶのか。

女優やアイドルのプチ整形は彼女の天然美少女っぷりを信仰している人には残念なことだが割と当たり前にある。否定していたとしても、一般的に整形疑惑がかかっていない人でもプチ整形くらいはしてたりする。

昔私のバイト先に某アイドルグループの女の子が来たことがあったが

映像や雑誌で見ると全く気にならなかったのに実際に対面して人間として出会うと

笑った時に動かない不自然な頬や、目頭を切っていておかしい形になっている目など

「あ…整形だったんだ…」というのがはっきりとわかった。

メディアは撮り方次第、修正次第。

 

整形してでも美しくなりたいか?という問いかけは私は残酷だと思う。

だって結局現実に整形だろうが美女は美女、天然だろうがブスはブスで生きる世界は変わってしまうから、整形してブスが美人に成り代わろうとするな、というのは

ブスは一生他人に負け続けるポジションでいろという残酷な発言に思える。

 

私は整形はしていない。

ただ親が天然主義と節約趣味の合わせ技で学生時代家族共用の古くて風力が弱く短い髪をギリギリ乾かせる程度のドライヤーしか使わせてもらえず、汚く見える縮れ毛くせ毛でもストレートパーマも当てさせて貰えない、

髪質に難があるのに激安シャンプーインリンスでさらにギシギシで髪質悪化するも無頓着、

視力が弱くてもコンタクトレンズや、薄型で小綺麗に見えるデザインのいいメガネは買ってもらえず瓶底みたいな重い安いメガネしか買ってもらえない

(親自身もお金があっても服に金をかけず、母の友人が来た時にあんたの一家は身だしなみに気を遣わなさ過ぎていると言われたことすらある)

 

そんな環境だったので、高校生になりコンタクトを買って美容院で縮毛矯正ができるようになると周囲の見る目が恐ろしいほど変わったことを実感している。

男子だけじゃない、女子も、学校の先生も。

それまでは「雑に扱っても良い雑魚」だったのが「丁寧に扱わないといけないお嬢さん」に早変わりした。世の中そんなもんだ。人は見た目で判断する。当然生活の全てや考え方は見た目に出るんだからそれで正しい。

清潔と清潔感をはき違えてるうちの親は、毎日風呂に入れと怒ったが、髪や肌を綺麗に保つための努力が世の中にあることすら教えてくれなかった。

自分の事を雑に扱っている人間は他人からも雑に扱われて当然である。

社会人になって久々に実家に戻った時に「髪綺麗になったじゃない。あれやこれやと金をかけなくても大人になれば自然と綺麗になるのよ」と鼻高々そうにする親に

「普通に月一でサロンに通って縮毛とトリートメントして金かけてるから、大人になって何にもしない人間が自然にきれいになるわけないでしょ」と言うと納得できないという顔をしていた。

いやほんと、身だしなみというのはお金かけた分だけ綺麗になるんだよ普通。それは年頃の女子ならよっぽど女を捨ててない限りみんな同意してくれると思う。

女の子は年頃になったら自然とお姉さんになって美しくなるのではない。

年頃になると好きな人が出来たり、姉妹がいる人がいち早く美容に気を付けるようになるから、それに合わせて美容を意識しだして綺麗になっていく。

内側から出る美とかいう物も結局はその意識。周りが可愛くなろうと自分は漫画やゲームしか興味ない喪女はいいトシになっても眉毛は繋がり猫背で化粧も変で決して美しくはなく男ウケも女ウケも良くない。

 

だから「美容整形で美人になろうとするな!=お前は雑魚のままでいろ」というのは

化粧程度では何ともならない顔に生まれてしまった人に対してあまりにも残酷で酷いことだと感じるし、雑魚から抜け出すために頑張ることは紛れもなく努力であると感じる。

ただ、「もしかしたらその子と結婚して子供を設けるかも」と考える交際相手の男性からは、整形後のかわいい子じゃなくて将来整形した母親同様に苦労するほどの不細工な子が生まれる確率が高くなるのは詐欺であり

文句を言ってもいいのは最低でもその女性と交際した人のみだと思う。美人は周囲にいれば普通にみんなの士気も上がる。彼女と子供を作る予定がない他人にとってのデメリットなんて何もない。

 

話を戻すが、ブスで苦労したアヤナは整形を努力だと感じていて

彼女との結婚を考えていた彼氏の光晴は詐欺だと言った。

それ自体は仕方がないことだと感じる。

あくまで2人は彼からのナンパで出会っていて

アヤナが美人に整形していなかったら出会うことすらなかった。

彼氏は美人と交際しているつもりであり、元不細工で子供もブスになるかもしれないと言われたら話が違うと怒るだろう…

が、この話の胸糞悪いのはそこじゃない。

 

アヤナの彼氏は「100%女を顔で選んだ」と言う自覚がまるでないままに綺麗ごとを口にするのが非常に胸糞悪い。

 

光晴はアヤナに自分の友人の前田夫婦を紹介し、前田の嫁・ハルカちゃんみたいになって欲しいと要求する。

ハルカは、はっきり言って不細工で、さらに太り過ぎのガンタンクみたいな体型の女性で、コテコテ油っぽいもの大好き女であるが

前田も不細工で二人が住んでいる家も1LDKくらいの普通のマンション=前田自身それほど稼げるってわけでもないのでいろんな意味で釣り合いは取れている。

ハルカの料理は男性好みの味付けとは言えるが長い事ハルカと生活していたら確実に肌は荒れるし太ってハルカと似た体型になるし、男性なら毛穴詰まって禿げが加速する。

普通なら、太りまくった女性がコテコテ料理を作っていたら「あー…まあそうだよね。たまに食べるなら美味しいし、良い子なんだけどね…これ続いたら体壊すよね…」みたいな感じになるだろうが

光晴はハルカの料理をベタ褒めで「ハルカのように癒し系で料理上手な女性になって欲しい」と言う…。現実がまるで見えていない。というかこの彼氏はとことん自分に都合のいいところしか見えない人なのである。

ちなみにアヤナは料理が出来ないわけではなく、体型に気を付けた和食が得意。

もし本当に光晴が”アヤナ”の内面が好きなら、ハルカの作るコッテリ料理や、首が埋もれるほど太ってる事さえも大して気にしてないおおらかで穏やかで癒し系?の性格を求めることは間違っているしコッテリ好きとスリムは共存しないのだ。

しかし彼氏はアヤナが美容に気を遣い過ぎで、年を取ればみんなよぼよぼの汚いおっさんおばさんになるんだから構わないだろうと畳みかける。

 

…これ、本当に二人で豚になっても幸せに暮らせるのなら全然いい。現在のハルカの夫前田氏のように太ったハルカを愛して楽しそうにハルカとの未来を語る男なら筋が通っている、が

 

光晴は、現実にはアヤナがハルカのように太ったら愛せないのである。

”自分好みの料理を出してくれて、手伝いや片付けは一切要求しない。夫の友人が初対面の女を家に連れて来ても嫌がらない控えめな性格で友達の嫁としては最高!でも自分が結婚を考えてるのは美人のアヤナ、…と言うところ。

アヤナの整形前の顔を見て受け入れられず青ざめてしまった…それが彼の本質だ。

 

アヤナのように(整形)美人で、ハルカのようにおおらかで、男好みな料理を作っても太らないように体調管理もしてくれるような理想的な妻もこの世に存在はする…が、それはもうプロ野球選手の嫁くらいのレベルであり

そんな女性と結婚できるのはプロ野球選手(のように名声と男らしい肉体と年俸を兼ね備えた存在)である。

太らないのに美味しい料理っていうのはお金がかかるのだ。

高カロリーな物はおいしい。

貧乏人はフルーツや野菜や魚を日常的に買えない。高いから。

 

光晴は「どうせみんな年を取るんだから、美容を気にしすぎるのは良くないよ」と一見凄い正論を言うのだがハルカを性別女としてはカウントしてない時点で将来は見えている。

いざ結婚してアヤナが美容に気を遣えなくなったら「こいつももうおばさんだからさあ~w見てこの皺wwババアはダメだわwあー○○ちゃん(会社の若い子)は可愛いな~羨ましいよ~おい嫁!爪の垢煎じて貰えよw」と言って嫁を怒らせ

怒った嫁に「怒るなよそれでも結婚してやってるんだからお前を愛してるって理解して冗談を受け流せよ」と言う典型的なクズ夫タイプになるだろう。

 

男性目線では何が悪いのかもわかりにくいようであるが

これ男女逆なら「あー旦那君は本当に稼ぎがないし男として弱者だわ…もっと稼げると思って結婚してやったのにさあ。後輩ちゃんの旦那君は家事も手伝ってくれるのに稼ぎも倍あるのよ?あんたマジで後輩旦那君の爪の垢貰ってきなよw」と自分は働いてない専業主婦のデブ嫁に言われる気分であり、めちゃくちゃウザくて愛が冷める。一緒に暮らしたくない人間上位ランカー。

 

ハルカちゃんの旦那・前田さんはハルカちゃんのあるがままを愛しているし

ハルカちゃんも前田さんを信頼していて二人は顔や体型も気にしてない、幸せな人間で一生幸せに生きていけるだろうけど

自分に都合がいい部分しか見ないタイプの光晴は前田のようにはならない可能性が非常に高く、今の段階からアヤナとは全く別人種と一目でわかるハルカのいいとこどりをしろと平然と言ってのける無神経さを披露しているので、女性読者にめちゃくちゃ人気がない。

綺麗なままのアヤナでいなければ、光晴はアヤナを決して女性として扱わないのに、美容に固執しなくても良いよと無責任に言う。

 

アヤナはアヤナで結構悪い部分はありまくるんだけど、それはお店の男に対してであって彼氏の光晴の前のアヤナは別に興味もない彼氏の友達の家に大人しく同行し

お世辞も言うし可愛い彼女をやっているので憎めない。

 

最後はアヤナがレンタル彼女をしていると言うことがバレ、そこから浮気を疑われ、今まで光晴に気を遣ってある程度我慢していたアヤナも爆発し整形前の写真を見せて彼の前から去る。

 

アヤナは光晴と結婚しても多分幸せにはなれなかったし、詐欺まがいの行為がバレてレンタル彼女の仕事も首になり、水商売するにも35歳と言う年齢で雇っても貰えず…それでも自分を曲げられないと言って町の中に消える。

 

…自分を曲げられないのと、他の人がそこまでやりこんでいないことにのめりこむのはオタク女子にも多い。アヤナもまた整形オタク、美容オタクとも言えるが。

30過ぎて偶然同じジャンルにいた同世代のオタ友が同年代のオタ友たちに向かって「(オタクとして)中途半端すぎる」と怒っていた時、

アヤナがハルカに対して怒ったエピソードと重なった。

ハルカはアヤナに「どんな化粧品を使っているんですか?」「私太ってるから恥ずかしいわ」と言った。それは本当にハルカがアヤナと同じ化粧品を使いたいと思っていたわけでも、そこまで真剣に悩んでいるわけでもなく

あくまで世間話として、旦那の友達が連れてきた女性を会話の輪に入れるために、

会話の糸口で話題を振ってくれたのである。

しかしアヤナはそんなハルカに対してダイエットもしていないのに化粧品の事など聞いても無意味だと怒りが沸き上がり、トイレを借りると言って席を立ってしまう。

 

世の中の大人は忙しい。仕事もしたり、家庭を持ったり、子供を育てたりしていると、様々なオタク活動はやっていてもぬるオタになってしまう。

 

20代の頃はオタク趣味に集中していればしているだけオタク友達からの評価も上がった。作品をしっかり読み込み、理解し、それを同人誌にアウトプットする技術を磨けば磨くほどオタクのフォロワーは増えて尊敬されていく。

オタなのに最新話を読んでいないとかありえないし

推しトークそっちのけで彼氏を作って遊びに行ったとかプライベートの話が多くオタ活に集中してない人はオタクの輪の中ではどっちかと言うと軽蔑されて避けられた。

 

でも30代の今…同じ30代のオタクが結婚することも正社員になることも諦めて

派遣社員で1~2年おきに更新終了されて職場を転々としつつオタ活にのめりこみ

同世代で忙しく働いたり子育てをしているオタクに対してオタ活が弱いと言って怒るのは流石に不気味に感じてしまうのだ。

 

勿論結婚してて正社員の奴が必ず良い奴ってことはない。変な奴も酷い奴もたくさんいるけど

独身で非正規雇用でその上他人に辛口のオタクの、良いところはどこ…?

 

明日カノのアヤナはオタク女だ。美容・整形にハマっていて、美容整形ジャンルトークできる仲間を常に求めていて、とあるきっかけからこの子も整形しているのかも!と同じレンタル彼女店で働いていた雪と言う女性に親近感を持って近寄り、美容軸では論外の女ハルカには終始引き気味で下にも見ている。

 

オタクは気を付けないとな…と思った。

アヤナに共感している女性は20代ならいいだろうが、30代なら結構ヤバい。

30を過ぎると本当にアヤナ同様自分を曲げられない人が増えてしまう。

自分を貫くのではなく柔軟に曲げられないだけと言う人が。